コラム

初動が命! 「明日から会社に来るな」と言われたときにすべきこと3つ

【本記事は以下の動画の原稿を掲載したものとなります。】

はじめに

こんにちは、弁護士の溝延です。

今回は「不当解雇と闘うシリーズ」の1回目で「まずはこれだけ知ってほしい 解雇の基本的知識3つ」というテーマを取り上げます。

労働事件を扱っていると、解雇は最もポピュラーな問題の一つです。

典型的なパターンとしては、仕事上で機材を壊すとか、得意先とのアポイントを忘れるとかのミスをしたら、社長がカンカンに怒っていきなり即日クビを言い渡されて以降、出社させてもらえないというパターンがあります。

このような場合、労働者側にもある程度の非があることからということで解雇を受け入れてしまったり、ほかにも解雇予告手当だけ支払ってもらうだけで一件落着させてしまったりということが見受けられます。

ただ、そのような対応だと労働者側としては会社側の理不尽な対応を黙って受け入れる必要は全くわけで、不当解雇に対しては断固として争うことが可能です。

このシリーズでは、不当解雇を争う際に知っておいてほしい法律知識や弁護士の闘い方についてお伝えして参ります。

今回は、その初回として、不当解雇について是非ともしっておいてほしい知識を3点、労働側弁護士の立場からお話しいたします。

1点目:解雇が無効になればその時点までの給与が請求できる

知っておいてほしい知識1点目。

これが最も大事なのですが、解雇が無効になればその時点までの給与が請求できるという点です。

本来、労働契約とは労働者側が仕事という労力を提供し、そのリターンとしてお給料をもらうという契約です。

そのため、労働者側が仕事をしなければお給料ももらえないというのが労働契約の大原則です。これを、ノーワーク・ノーペイの原則といいます。

しかしながら、不当解雇の場合、労働者側が働けないのは会社側が一方的に仕事の提供を拒絶したせいであり、そのせいで労働者側が給料をもらえないのは不公平で理不尽ということになります。

そのため、不当解雇で解雇が無効になる場合、労働者側はその時点までに発生している給与を会社側に請求できます。

これが、解雇予告手当を請求するという場合ですと、解雇予告手当とは、「解雇が有効でも即日解雇には1か月分の給与は払おうねとい」うものです。つまり、解雇予告手当を請求するということは、解雇は有効と受け入れるので1か月分の給与くらいは支払ってよという請求に理解されてしまうので、解雇無効から給与を請求する場合と比べて解決金額に雲泥の差が生じてしまうので、注意が必要です。

ここで、たまに問題になるのは、解雇が無効になるまでに他のところで働き始めていたらどうなるのか、という点です。

この点については、他のところで収入を得ている場合でも、不当解雇した会社側は最低でも毎月の給与の6割は支払わなければならないとされています。

そのため、労働者側としては、基本的には、他のところで働きながら不当解雇を争うことに対するデメリットはありません。

厳密には完全に全てのケースで不当解雇した会社への給与の支払いの請求が認められるわけではないですが、そのあたりはすごくディープな話になってしまうので割愛させていただきます。

ここでは、労働者としては他のところで働きながら不当解雇を争うことにデメリットはほぼないということだけ覚えておいていただければ結構です。

2点目:解雇はほとんどの場合で無効になる

知っておいてほしい知識の2点目は、解雇はいざ裁判になれば原則として無効になるという点です。

そもそも解雇というのが法律的にどのように位置づけられているのかというと、解雇とは会社側から一方的に労働契約を終了させる意思表示です。

労働者の意思を無視して労働契約を終了させる一方的な行為なので、その有効性は非常に厳しく絞られています。

具体的な要件は労働契約法16条が定めていますが、それによると、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされています。

ものすごくざっくりと説明すると、解雇が有効になるためには、まず解雇になっても仕方ないような問題を労働者側が起こし、しかも、教育とか指導をしても全然改まらないのでもう解雇するしかないというような場合でないと解雇できないできないよ、ということが定められています

そのため、裁判で解雇の有効性が争われた事案では、非常に高い確率で解雇が無効と判断されます。

特に、中小企業がする解雇が有効になるケースは宝くじに当たるレベルで少ないと思われます。

なぜなら、中小企業の社長は労働契約法の規定なんて知らないので、その要件を検討して解雇するということはほとんどないからです。

ただ、もちろん、全ての解雇が常に有効になるわけではないので、解雇を言い渡された場合には自己判断で行動をせず、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

3点目:労基署に相談してはいけない(弁護士に相談しよう)

知っておいてほしい知識の3点目は、「不当解雇の問題を労基署に相談してはいけない」という点です。

労働問題の相談先、というと、おそらくほとんどの人が労基署への相談を考えるのではないかと思いますが、少なくとも不当解雇の事案で労基署に相談することは弁護士的には全くおすすめしません。

その理由は、労基署は解雇の有効・無効を判断することができないからです。

そもそも労基署がどのような機関なのかというと、労基署は労働基準法や労働安全衛生法といった法律の規制に違反する企業を行政処分したり、刑事捜査をしたりする機関です。

そのため、労基署としては、労働基準法などに書かれていない事柄を相談をされても何もできないということになります。

そして、解雇の有効性については労働基準法ではなく労働契約法という別の法律で定めていることです。そのため、解雇の有効・無効については労基署は判断することができません。

そのため、労基署に自分の解雇が無効ではないかという相談をしても、奥歯に物が挟まった説明しかされません。

それどころか、解雇予告手当については労基法20条が定めていて、解雇予告手当を支払わないと罰則があるということもあるため、労基署に不当解雇について相談に行くと「解雇に不満があるなら解雇予告手当を請求しなさい」と指導されることがかなりの割合で見られます。

しかしながら、いったん解雇予告手当を請求してしまうと、その解雇は有効であると受け入れたことになってしまうので、弁護士的には絶対にやめてほしい行為です。

このように、不当解雇の問題については労基署は対応ができないため、労基署への相談はおすすめしません。

解雇に疑問をもった場合には、労働問題を扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

最後に

以上、今回は「まずはこれだけ知ってほしい 解雇の基本的知識3つ」というテーマでお話をさせていただきました。

改めて今回の動画の内容を簡単にまとめますと、①解雇が無効になるとその時点までの給与が請求できる、②解雇は労働者側の意思を無視して行なわれるものであるので、原則として無効になる、③不当解雇の相談をするときは労基署ではなく弁護士に相談するのがおすすめである、というお話をしました。

まわりに理不尽な解雇をされたという方がいらっしゃれば、是非とも今回の情報をお伝えいただければと思います。

それでは今回は以上となります。また次回の動画でお会いしましょう。さようなら。